Birdland ネタばれレポート⑤ ポールのその後

10月9日のBirdland刈谷公演

この日、ちょっとした事件が起こりました。

元々持っていたチケットは、17時開始のもの。

ですが、いつの間にか自分の脳内では12時開始にすり替わってしまっていました。

これ、ほんと逆じゃなくてよかった、まじで。気付いたの、半分くらい来てからだったんですよね。

もうせっかくだし、これで最後だしと、ダメ元で当日券の列に並びました。並ぶっていうか、把握している限り自分を含め2人しかいなかったけど。そして無事チケットを購入できました。9列目の中心寄りっていう、すごくいい席。

金曜日は9時まで仕事があったから移動に疲弊したり色々あったけど、本当に行ってよかった。

 

さて、この日が自分にとって最後のBirdlandだったのですが、この日初めて「その後のポール」について、自分的に納得のいく落とし込みができた気がします。

 

やっぱり気になる最後の部分。

「僕は死なない。僕の見たものを君が見れるようになる日まで。僕の行った場所に君が行けるようになる日まで。僕のしたことを君ができるように日なるまで。」

みたいなところ。

ずっと不思議だったんですよね。

「君」って誰を指すのか。直前のことを考えるとマーニーかもしれないし、もしかしたらファンなどの人々かもしれない。この辺、音楽の永遠性でも書いたんだけど、ポール自身は死んでしまっても音楽は残り続けるのかなとか考えてみたり。

でも、マーニーに「もうすぐ死ぬのかな?」って聞いて、「そうは思わない」って言われていることとか、生に執着しているようなポールが死ぬのかなっていうのも思ったりして。

最初の直感はいやでも死んだなこれって思ったんだけど、違う角度から見たら別の解もあるような気がしていて。

 

それがね、夜の公演を見ていて、本当に最後の最後、こういうことかもしれないなっていうのが自分の中に湧いてきた。

 

「君」っていうのは、心を入れ替えた新しいポールなんじゃないかって。

 

最初に見た公演は9月22日の昼と夜だったんだけど、次に見たのが9月26日。

26日は、なんだか強烈だった。もしかしたら演じているうちに上田くんの中に新しい解釈が生まれたのかもしれないし、ポールが憑依してきたのかもしれない。この日、すごく衝撃を受けた。見た後もこう、ふわふわしていて。

そして9日。

たぶん、嘘をつかれることにも、つくことにも疲れ果て、どうしようもなくやりきれなさを感じていて、孤独感を募らせて。多分、心の底では止めてもらいたかったし、過去に戻りたかったのだろう。

だから、ジョニーが最後に去る直前の

「お前を止めたかった。落ち着かせたかったんだ」

という言葉に、あんなに感情を揺さぶられ、取り返しのつかないことをしたという自覚を伴った後悔の念を抱きながらジョニーやマーニーに涙を流しながら謝罪したのだろう。

 

ジェニーを町の子たちみたいで気に入っていると話していたポール

過去の曲だけでライブをしたポール

もう一度地元のライブハウスでライブをしたいと言ったポール

シャロンの笑顔を見たかったポール

もう一度ジョニーの穏やかな寝顔を見たいと願ったポール

 

そして

 

自分の口が自分ではない感覚に陥っていたポール

人々の視線が恐ろしいものにしか感じられなくなったポール

最近の作品をポジティブだと評されて不快感を露わにしたポール

お金や数字に振り回され、人を無意識に振り回し、自身も疲弊していったポール

自分が癌細胞なんじゃないかって言ったポール。

 

最後のあの場面はもしかしたら、

「僕は死なない」→ポール自身は死ぬつもりはない

「僕」→現段階のいろいろ滅茶苦茶なポール

「君」→新しく心を入れ替え、自分のやりたい音楽をやり、自分の考えや思いを自分の言葉で述べ、周りの人のありがたみを知り、人を大切にするようになったポール

「見たものを見れる、行ったところに行ける、したことをできるようになる」→かつてのポールがレコード会社の力などによってできていたことを、今度は自身の力で、自身の意思で物事を選択し、できるようになること、例えば売れるための曲を作ってミリオンヒットしたのを、今度は表現したい曲を作ってミリオンヒットさせるみたいな。

そこの乖離は大きくて、簡単なことではないかもしれないけれど、その道を選ぼうとしたんじゃないかな。

 

現在のポールと決別し、新たなポールとして生きる。

そんな道を選んだのではないかって、26日、そして9日の上田くんの演技を見て感じました。

ついでに言うと、台から飛び降り、暗転。

ここが入れ替わりの部分で、会場が明るくなって立ち上がるところ。

もしかしたら、ここ、実はまだ終わりじゃないのかもしれないなって思いました。

明るくなって、台ではなく地に足をつけて立ち上がる。

それこそが新たなポールの始まりなんじゃないかって。

 

まあ、どうしても人間なので見たい情報や自分に都合のいい場面をつぎはぎして「こうじゃないか」って言ってしまっているので、こういうのもね。よくないとは思うんだけど。

でも、自分の中ではこうなのかな、こうだったらいいなという解が1つ見つかったので、よかったなと思いました。

この2~3週間、いろいろといい意味で考えさせられた作品。

松居さんや上田くんをはじめとする出演者の皆様、舞台に関わったスタッフの皆様、本当にありがとうございました。とても楽しかったです。

毎回、観る前は上田くんを観に行っているのに、お芝居が始まった瞬間にポールを見ていて、終わったあとポールのことしか考えられなくなっていたの、不思議な感覚でした。何回かライブじゃ見れない距離で上田くん見てたのに、興奮するどころか脳みそフル稼働でポールのこと食い入るようにみてたからな。

ぎりぎり残っている上田くんの感想、脚長い、腕長い、顔がいいくらいしかないわ。笑

他の出演者さんも本当に素敵で、最終日ジョニーの怒りに満ちてひりつくような「何が問題か分かるるよな、最低な動物だな!」や、アナリサの心底うんざりした表現、ジェニーの募っていく苛立ち、本当に良かった。

ポールについて一通り考え終わったので、今度はほかの登場人物についてもまとめてみたいな。